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(仮称)遠別・初山別風力発電事業 計画段階環境配慮書に関する意見書を提出いたしました

2025.07.23
要望・声明

日本自然保護協会(NACS-J)は、北海道北海道天塩郡遠別町及び苫前郡初山別村で計画されている「(仮称)遠別・初山別風力発電事業」の計画段階環境配慮書に対して、事業予定地のほぼ全域が道路や送電線が皆無の原生的な自然林であることから、事業実施によって広範囲の自然林伐採が想定され、原生的な森林環境や希少猛禽類への悪影響など生物多様性を大きく損失する恐れがあるとして、本事業は見直すべきとの意見書を提出しました。


2025年7月23日

株式会社レノバ 御中

(仮称)遠別・初山別風力発電事業 計画段階環境配慮書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 土屋 俊幸

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、北海道天塩郡遠別町及び苫前郡初山別村で計画されている(仮称)遠別・初山別風力発電事業(事業者:株式会社レノバ、最大288,000 kW、基数:最大36基)の計画段階環境配慮書(作成委託事業者:一般財団法人日本気象協会、以下本アセス図書と言う)に関する意見を述べる。

1.本事業予定地のほぼ全域が自然林であり、事業実施は見直すべきである

本事業実施想定区域は、エゾマツ-トドマツ群集やトドマツ-ミズナラ群落など、約90%を植生自然度9の自然林の群落が、約5%を植生自然度10の自然草原が占めており、ほぼ計画地全域が自然植生である。
また、事業実施区域北側のオタンコシベツ川沿いには車道があるものの、風力発電機設置が想定される尾根部を含め、他の事業実施想定区域内には全く車道も林道も存在しない。さらには事業予定地周辺には送電線も全く存在していない。従って、風力発電機の建設および送電線の設置のためには、長距離の林道建設、大規模な土地の改変などを新たに行う必要があり、広範囲の自然林の伐採が想定される。
このような原生的な森林の大規模な伐採を伴う事業の実施は、世界的にもその重要性が叫ばれ、日本の生物多様性国家戦略でも重要な目標として掲げられているネイチャーポジティブの観点からも看過されるものではなく、見直すべきである。
なお、事業者のサステナビリティの考え方と基本方針には、再生可能エネルギー事業において「地球」と「地域」を最重視していると記載があり、その経営原則には、「人類と地球の、永遠の共生に貢献します」とあるにも関わらず、本事業はその「地球」と「地域」のかけがえのない自然環境に不可逆的な悪影響を及ぼしかねないものである。

※参照:株式会社レノバのサステナビリティの考え方と基本方針(2025年7月18日現在)
https://www.renovainc.com/sustainability/philosophy/policy/

2.本事業予定地の大半を占める国有林の保安林内での事業実施は見直すべきである

事業実施想定区域のほぼ全域は国有林の保安林に指定されており、特に事業実施想定区域東部の約3割の区域は、土砂流出の著しい地域などにおいて土砂流出を防止する目的の土砂流出防備保安林に指定されている。このような土砂災害リスクが懸念される地域の保安林を広範囲で指定解除し、大規模な土地改変を行って風力発電機を尾根上に設置することは、当該地域の土砂災害リスクを格段に高めることに繋がることは明白である。
また、広範囲に土地の改変を行うことは、長期間にわたる下流域への土砂流出を引き起こし、結果として河川環境の悪化を生じさせることが容易に予想される。
北海道は、2024年11月に「地域脱炭素化促進事業の促進区域の設定に関する環境配慮基準」を発表しており、地域の実情に応じて環境の保全に適正に配慮し、地域へ貢献する脱炭素化促進事業に関する基準を定めている。この基準では、風力発電施設の利活用の促進区域に含める区域として、保安林や保護林は不適切であることが示されている。従って、本計画地全域は、風力発電施設の導入を促進するべきではない区域に該当しており、事業の見直しが必要である。

3.希少猛禽類の正確な生息状況を把握するための具体的な現地調査が必須

事業実施想定区域内の初山別村では、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)において国内希少野生動植物種に指定されているクマタカが繁殖しているという指摘がある(本アセス図書の表4.3-16(3))。しかし、現時点では事業予定地周辺でのクマタカを含む希少猛禽類のデータが不足しているとの指摘もされている。
クマタカについては、環境省が2024年6月に示した「風力発電事案におけるクマタカ・チュウヒに関する環境影響の基本的考え方」において、生息数や繁殖場所に関する詳細な調査を行った上で、事業を進めるべきである方針が示されている。しかしながら、当該地域は既設の林道などが存在しないため、十分な希少猛禽類の生息調査がおこなえるのか疑問である。希少猛禽類の正確な生息状況を把握するための具体的な現地調査のやり直しが必須である。

以上

遠別・初山別風力発電事業の実施想定区域地図(画像)

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